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詩情の萌芽

夕日に焼けたアスファルトに
少女の影が大きく伸びている

少女は不思議に右手をあげて
碗のようにくぼんだ手のひらに
しぼんだ桜の花房がひとつ
鎮座していた

それは果たして戦利品か
親への土産か
はたまた墓でも作ってやる気だったのか
少女はそれに鼻を近づけ
ことりと首を傾げてまた歩きはじめた


産毛の透けて見えそうな柔い肌に
しおれた桜が震えている
ことんことんことん
少女に合せてランドセルが鳴る

首を反らせばまばらな桜花
ふと足元に
立派なつつじが咲いていた

ことんことんことんと
眠そうな音が遠ざかっていく
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