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エンプティ・ランプ

燃料切れの車で
雑念を振り払うようにラジオのボリュームをあげる
輝く23時の国道
疲れとやけがあいまって
ご褒美の牛丼屋へとハンドルを切る

カウンター席を避けて奥の二人席へ
テーブルを離して隣り合った二人の女が牛丼を食べる
彼女には待ち人でもいるのだろうか
私にはいない
けれど同じように携帯電話をいじりながら
思い出したように箸を持つ

あぁ、なんて詩情のない生活

だが愚直に文字にして、
少しだけ、
溜飲を下げるのだ
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交合

水滴が青白い頬を濡らした
乾いたような産毛の上を
それは球体となり
雫となって伝い落ちる

滝の如く降る水に、少年は酸素を求め
その滴りから逃れることもせず
天を仰ぎ、口を開き
閉じ、また開き、唇だけがやけに赤い
それは降り続ける
少年を叩きのめすかのように

灰色の街から視界は一転する
複雑にうねる雲の中心は燃える太陽が威光を覗かせんばかりに
麦の穂の色に輝き
ただ、少年だけがその光を知った
光が最前から街を照らしていたことを

それは降り続ける
神の愛からこぼされる涙も
それは御身を離れれば冷たく
人々を凍えさせるばかり

賞賛の言葉を、少年の唇が形づくった
彼を想うひとしずくが御身から零れ落ち
それは冷えて、
少年の赤い唇の内側へと滑り込んだ

生白い陶器のような肌は雫をはじき
水滴が頬を伝う
熱く透明なる血潮も
少年の肌を離れるその瞬間に熱を失い

それでも少年は
天を仰いで愛を受け
歓喜を流し
畏れを身内に抱いて
ただ、口を開き、また閉じ
また開き
光を見ていた