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ヒダリキキ

僕は
もう一対の片割れを愛している

生まれながらに
同じ形
生まれながらに
正反対
鏡合わせの存在を
主以上に愛していた

「あなたは、私を通してあの方を見ているだけ」

だってあの方はヒダリキキだもの
ヒダリキキ……?
君の名を冠したそれに首をひねりながら
僕は君と肢体を絡ませた
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百花の魁

それは
唐突な変化であった
ごつごつとした枝先に
零れ落ちるかのごとく花弁が開いていた

殺風景な
何の変哲もない
くたびれた民家の裏で
それは生命を迸らせていた
色を与えられていた

気づけば君は木に並んで
その薄紅に指を伸ばした
君の人差し指と親指の間で
ぷるりとそれは震えた

もしや押し潰すのだろうか
君ならばやりかねない
胸に苦いものが走る
だのに目はますます影となる指先に
惹きつけられ
胸がどきんと
弾けて

そして、君は
花弁の奥をひと撫でした

硬いだろう皮膚が
しべを撫ぜる
やわらかく
その身がたわむ

今度こそ目をそらした
だのに君が人差し指を嗅ぐのが分かってしまって
やはり、触れただけでは香らぬか
などと聞こえてしまって

あぁ、わたしは許せそうもない
不埒な君の右手にか
奔放に咲く花魁をか
それは分からないけれど

揺れる、揺する

涙が止まらないのだ
たったの一小節で悟ったのだ
わたしはわたしが変わっていないことを

いくつもの流れ星と結び合うように
求めあうように
歌った夜を覚えているだろうか
あの時のわたしたちは
剥きだしの生命であった
本来の光にようやく出会った歓びの声をあげることに
何の躊躇もなかった
自らが世界の中心であることを
羞じることもなく叫ぶことができた

いま、わたしは歌いたいのだ
どうしようもなく歌いたいのだ
生まれてきたことを言祝ぐ歌を
世界をのみこみ
世界に捧げる
衝動が私の喉を貫く

あぁ、歓喜している
いのちが、かがやくのだ

10 オルゴール

ぜんまいを回そう
そうすればもっと君とおしゃべりできるだろう

ぜんまいを回そう
そうすれば
君の望む言葉を僕は奏でられる

淀むこともなく
途切れることもなく

だからぜんまいを回して
あぁ、君が僕の心を揺さぶりつづけても
僕は自分で君を愛せない
君が僕を求めるときにしか
だからいつも捨てられる
いや、捨てるという気持ちすら失せて
忘れられるのだ

何かの弾みに僕の体が回転する
金属の歯をいくつもかき鳴らす
あぁ、どうか、こちらを見て、
ふたを、
閉め、な、い……

蝶番が、さよなら、と囁いた。

香気

あなたの胴を絶ったとき
あなたは一心にいのちの匂いをふりまいた
大きな鋏が音を立てるたび
喉をわさわさと震わせた

流水があなたを伝い
不思議ならせんを描く
とげを抜かれたあなたは
身を揺すって
無慈悲な音に耳を塞ぐことも出来ない

新たな水へあなたをうずめて
痛んだ葉を摘み取ろうとしたけれど
老いながら
なお、青い匂いを出したあなたを
それ以上は傷つけられず
私はそっと
手を離した

あなたは私を責めもせず
ほっとため息をついた

恋文

あなたの書いた言葉を目でなぞる
いつもいつも目に留まるの
情報を、言葉を、感情をザッピング
ネットなんて言いながら
私を包んではくれないのに
でも、あなたの言葉はいつも私の心にトン、とぶつかってくる

文字だから美しいのかしら
何度見ても好き
でも、もしあなたの声でそれを聴けたら
もっと素敵なのかも、と私の奔放な部分が伝えてくる

きっとあなたは目にすることのないラヴ・レター
言葉を叩きこむように書いては消している
私の指の動きを感じて
ペットボトルに挿さったバラだけが
ゆさゆさと花首を揺らす

09 英雄

そしてあなたは真っ白な世界に
何のためらいもなく飛び込んでいく


「君の頭の中を覗いてみたいものだ」
そういうと君は、ふっと虚空を見て、そして微笑みを口の端に灯す。
「驚くよ」
瞳を閉じて、歌うように。
近くで芝を刈っているのか、青くさい匂いに君の言葉が溶ける。
「何もないからね」

私の唇が狼狽する。言葉が、せきとめられる。

でも君は、あんなに色々なことを語るじゃないか。自信たっぷりに。
全てを見通した目で、人々に語るじゃないか。
どれほどの命が、君の言葉に染まったと思う?

無言の私に、君は朗々と語る。
「思いついたことが面白ければ、誰かを救えるのなら、私はそれをやってみようと思うんだ。
言葉にすれば、皆力を貸してくれる。面白く生きたいだけだよ。皆そういうもんだろう」
私は瞠目する。君の言葉で、どれだけの命が赤に染まったと思う?

あんなにも、自信たっぷりに、思いつきを話していたのか?
それで使われたすべてに、君は責任を負えるのか?
私たちは一体、何を目指していたんだ?
君は一体、何を見て、いるの、だろう

私の目の前には君が面白いと創った世界があって、
時間を渡るにも「君」という羅針盤があって、
―そして君の瞳に映るのは何なのだろう。

「ずっと何も見えないのだろうよ。だけど、後ろを振り向いたらうつくしい光景が広がっている、そんな気がして、
進めば世界はもっとうつくしくなる気がして、勿体なくて振りかえれない。
前しかないのだから、とりあえず、面白く進んでやろうと思うわけだ」

君は苦笑する。
無明を前に君は笑っている。
そして、ずぷりとためらいもなく、何もない世界に飛び込むのだ。

ツイッター詩交流企画「詩合せ」企画概要

ツイッター交流企画【詩合せ】

◇概要
ツイッターのハッシュタグ機能を使ってある一つのお題のもと、詩を投稿して頂き、感想を言い合おうという企画です。

◇企画予定日時
4月27日(日)19時~22時


◇お題

「右手」

◇参加方法
主催者が後日お知らせする投稿用のハッシュタグをつけて、詩を投稿して頂きます。
投稿する詩はツイッターの本文に書いていただくもよし、HPやブログ上にある記事のURLを貼り付けてツイートして頂いても構いません。
別に、感想用のタグを用意しますので、そのタグをつけて投稿された詩の感想をツイートする。

これだけです。
感想だけでの参加でも全く問題ありません。

◇注意点

①詩の長さは問いませんが、短歌・俳句形式の投稿はご遠慮願います。
②代理の投稿ツイートも可能です。その際は、必ず作品の作者名を明記してください。
③詩は何作でも投稿していただいて構いません。
④感想タグは、投稿された詩への感想にのみつけてください。
⑤感想タグはあくまで「感想」であり、「批判」は行わないでください。

主催者
明希人(ツイッターアカウント名:akito_rd)

ご質問・ご要望等ありましたら、上記のアカウントへリプライ・DMを送るか、当ブログまでご連絡ください。
私事でお返事が遅くなる場合がありますが、必ずお返事いたします。